こんにちは、設計の石塚です。
早速ですが問題です。
この木は何の木でしょう?
この木は岐阜県関市板取に群生している
株杉と呼ばれているものです。
伐採された杉の切り口に、新しい杉の芽が付着して成長し
この様な形になったのだそうです。
全国的に『杉』と言えば、屋久島の縄文杉や奈良の吉野杉が有名ですが
この株杉が群生しているのは全国でもここだけ!とのことです。
一般に『杉』と言えば真っ直ぐに植林された木をイメージしますが
一口に『杉』といっても色々あるものですね。
さて、なぜ、今回『杉』をテーマにしたかというと・・・
お客様との打合せの時に、
『杉の梁で大丈夫ですか?弱くないですか?』
『ベイマツと杉だったら、ベイマツの方が丈夫なんじゃないですか?』
といったような、『杉』に対するネガティブな質問を受けることがあるからです。
そこで、『杉』に対するイメージを変えてみたいと思い今回のテーマとしました。
まず、なぜ『杉』は弱いというイメージがあるのか・・・?
木材を梁として用いる場合、その強さを示す方法の一つとして
『曲りにくさ(ヤング係数)』で表す方法があります。
下図のように力(荷重)が上から加わった時
曲りにくいほど丈夫な材料であるという考え方です。
日本建築学会基準の値を参考にすると
『杉』の『曲りにくさ(ヤング係数)』は6,865N/mm^2に対し
『ベイマツ』は9,807N/mm^2 となっていて
約1.4倍程『ベイマツ』の方が『曲りにくい』という結果になります。(下表参照)
また、建築基準法の告示には木の種類による強さが定められていて
『ベイマツ』は28.2N/mm^2となっており、『杉』の22.3N/mm^2より
1.3倍程度、曲りに強いということになっています。(下表参照)
これらの数値を見れば、やはり『ベイマツ』の方が強いのでは?
という感じになりますが、これにはちょっとしたカラクリがあるのです。
ここで示されている『杉』の数値は
冒頭に紹介した『縄文杉』や『吉野杉』『株杉』などに加え
一般の『杉』まで、ありとあらゆる『杉』を含めた数値なのです。
『杉』はその特性として個体差が大きく、強さにバラつきが多いため
強いモノ・弱いモノ全てひっくるめて『杉の強さ』として評価する場合
安全を考えてどうしても小さく見積もる必要があるのです。
この様な理由で『杉』の強さが低く見られ、『杉は弱いのではないか?』との
イメージにつながっているのではないかと思います。
では、同程度の『曲りにくさ(ヤング係数)』という同じ土俵にのせて
それぞれの『強さ』を比較した場合はどうなるのでしょう?
結果は、国交省の告示に示されている通り下図のようになります。
な・なんと!
『杉』の方が『ベイマツ』より強いことが分かります!
一般には曲りやすい材料ほど強度が低い傾向にありますが
『杉』は柔軟で粘り強いため強度が高く設定されているということが
このグラフから読取れます。
つまり、キチンと管理された『杉』は『ベイマツ』と比べても引けをとらず
極めて優秀な材料であることが理解していただけると思います。
また、遥か外国から船によって輸入されてくる『ベイマツ』よりも
地場で伐採し使用する『杉』の方がCO2の排出量といった環境の面からでも
有利であることは間違いありません。
『杉』ってなかなかやるじゃないか!と思えてきます。
さて話は変わって・・・
先日、あるお客様の建築中の現場で【手形式】を執り行いました。
この手形式とは完成後では隠れてしまう梁に
お客様の記念となるよう、ご家族で手形を押してもらうイベントで
私も関係者(設計者)として参加させていただきました。
こちらのお宅も梁には『杉』が使用されています。(柱は全部、桧♪)
先に述べた通り『杉』は木材の中でも優秀な材料であると考えますので
私も設計に携わった者として自信を持って手形を押させていただきました!
これから、家を建てられる皆様!
手形式でお会いできることを楽しみにしています。
岐阜事業所・石塚(設計)